研究概要 |
大動脈弁輪拡大に伴う大動脈弁閉鎖不全症に対して自己大動脈弁温存術式が提唱されている.その一つである,Yacoubらの報告したリモデリング法の問題点と考えられる遠隔期の弁輪拡大を予防するという目的で,この術式に併用して大動脈弁をリングを用いて形成することで安定した術式が得られると考え,臨床応用可能な大動脈弁輪リングの開発を考えた. 大動脈弁輪拡大モデル作成と試作リングの効果判定 一昨年・昨年度に行った大動脈弁機能に関する基礎的研究結果より昨年度から作成を試みている大動脈弁閉鎖不全症モデルに対して試作リングの効果判定を行った. 昨年度,大動脈弁輪を温存したまま大動脈弁交連部を切開し,Sinotubular junctionに向かってパッチ拡大を行うと大動脈弁逆流を引き起こすことが分かったが,その逆流の定量化には至らなかった.今年度は正常ブタ(n=3)を用いて心筋保護液投与心停止下にパッチ拡大(拡大部が弁輪の150%となるようにした)を行い摘出灌流心モデルを作成した.内視鏡を用いて弁尖の適合性を観察すると中心部に適合不良が見られ,心表面から超音波心エコーで観察すると3〜5cm^2の逆流面積がみられ,1〜2度程度(臨床上用いられている逆流分類上)と判定できた.これに対して大動脈外側よりリングを縫着する効果をみた.縫着する部位を大動脈弁輪部とSinotubular junction部の2カ所で行ったところ,弁輪部でのリング縫縮では一定の効果は得られなかったがSinotubular junction部でのリング縫縮では超音波心エコー上の逆流面積が減少する傾向が見られ,臨床応用可能なことが示唆された.この結果を基に慢性モデルでのリングの効果を見るために人工心肺・心停止下に上記パッチ拡大を行ったブタの慢性モデル化を試みたが(n=3),いずれも急性期に死亡したため効果判定には至らなかった.
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