研究概要 |
1)肺炎球菌表面蛋白(pneumococcal surface protein A,PspA)に対する小児の免疫応答について検討した。 抗PspA特異的抗体価の年齢的変化 健康小児10名を1グループとして、2ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳の8グループの血清を用いて、酵素抗体法(ELISA)でPspAに対する特異的抗体価を測定し、小児における肺炎球菌特異的血清抗体価の年齢的な変化を検討した。特異的抗PspA抗体価はIgG,IgM,IgAともに、年齢に伴って上昇することが判明した。このうち、IgM,IgAは加齢と共に徐々に抗体価の上昇がみられたが、IgGは母親からの胎盤経由の受動免疫により出生時から生後6ヶ月までは低下傾向を示した。その後2歳まではゆっくりであるが、抗体価の上昇が認められ、2歳以降は急激に抗体価の上昇を認め、成人では小児期のピーク値よりもやや低下していた。このPspAに対する特異的IgG抗体の年齢に伴う変化は、インフルエンザ菌の共通抗原であるP6に対する特異的IgG抗体価の上昇パターンと極めて類似していた。 2)インフルエンザ菌共通抗原であるP6蛋白を経鼻免疫し、鼻咽腔におけるインフルエンザ菌のコロニー形成抑制効果について検討した。 鼻咽腔におけるインフルエンザ菌のクリアランス実験 マウスのインフルエンザ菌鼻咽腔感染モデルを作成し、P6蛋白を経鼻免疫した群と対照群とで比較検討し、P6蛋白の経鼻免疫ワクチンによる疾患予防効果について研究した。すなわち、マウスに経鼻的にnontypableインフルエンザ菌を接種し、P6経鼻免疫群および非免疫群で鼻咽腔からの細菌クリアランスの程度および消失期間などを比較検討したところ、非免疫群ではインフルエンザ菌のクリアランスに接種後7日を要したが、P6経鼻免疫群では3日でクリアランスが認められ、経鼻免疫によりクリアランスの著明な短縮がみられた。この結果からP6蛋白の経鼻免疫が疾患予防効果を有する可能性が示された。
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