研究概要 |
LPSによる刺激は生体細胞表面上のCD14を介して細胞内にシグナル伝達されるが,一方で,スカベンジャーレセプターを介してLPS分子のままで,あるいはLPSがCD14と結合した状態で生体細胞内へ取り込まれる可能性も示唆されている.しかし,細胞内でのLPS分子の挙動については明らかとはなっていない.本研究では,LPSの細胞内結合分子を明らかにすることを目的に,LPS反応性のマウスB細胞由来株化細胞(CH12.LX細胞)を用いてLPSが特異的に結合する生体細胞内分子を分画し,得られた試料より分子生物学的手法を用いて細胞内の特異的なLPS結合部位について検討した.まず,CH12.LX細胞をCHAPSを用いて溶解後,カラム分画により,Escherichia coli由来のLPSに特異的結合を示す細胞内タンパクを精製した.LPSとの結合能はenzyme-linked biotin-avidin assayにより行った.調製したタンパクのN末端シーケンスを行い,部分アミノ酸配列を決定した.その結果,ラットのリボゾームタンパクL5と高い相同性を示すことが推定された.そこで,L5タンパクの推定塩基配列から設計したプライマーを用いて,マウスcDNAライブラリーよりPCR法によりマウスリボソームタンパク(L5m)のcDNAクローニングを行った.cDNAのシークエンスの結果,マウスのL5mの塩基配列はラットのそれと高い相同性を示した.得られたcDNAを大腸菌の高発現ベクターであるpTrc99を用いて発現させたところ,SDS-PAGE上で約36kDaのリコンビナントタンパクのバンドが認められた.このリコンビナントタンパクにおいてもLPSとの特異的な結合が認められた.以上の結果より,LPSが特異的に結合するマウス細胞内分子の一つはリボソームタンパクL5mであることが明らかとなった.
|