研究概要 |
大阪大学医学部第3内科の小守壽文らはcbfa1ノックアウトマウスを作製し、これらのマウスを解析中に骨格の異常に気付き、私共のグループと共同研究を開始した。その結果、我々はcbfa1ノックアウトマウス(cbfa1 -/-)では、骨芽細胞の分化が著明に抑制され、骨組織が全く形成されていないことを明らかにした(Cell89:755-764,1997)。また、cbfa1ヘテロ接合体(cbfa1+/-)のマウスでは鎖骨や頭蓋の形成不全などが認められ、これらの症状はヒトの鎖骨頭蓋異形成症の骨格異常に類似していることを報告した(Cell89:755-764,1997)。本研究では、cbfa1ヘテロ接合体マウスとヒト鎖骨頭蓋異形成症の異同を解析することを目的に研究を行った。 1)胎生18.5日齢のcbfa1へテロ接合体マウスでは鎖骨がほとんど形成されていなかった。また、生後6週齢までのcbfa1ヘテロ接合体マウスの鎖骨を軟X線および組織学的に観察したが、すべての個体で鎖骨の形成不全が認められた。 2)胎生18.5日齢のcbfa1へテロ接合体マウス頭蓋では野生型マウスに比べて大泉門が大きく開存していた。また、生後6週齢のcbfa1へテロ接合体マウスの頭蓋でも大泉門の開存が認められた。 3)cbfa1へテロ接合体マウスの頭頂骨と脛骨における骨形成は骨形態計測学的に大きな差違がみられなかった。 4)cbfa1へテロ接合体マウスと正常マウスの破骨細胞の数に大きな差は認められなかった。 5)cbfa1へテロ接合体マウスでは過剰埋伏歯,口蓋裂の発生は認められなかった。 以上の結果より,cbfa1へテロ接合体マウスの骨格の異常はヒト鎖骨頭蓋異形成症に類似していたが,歯の異常や口蓋裂の発生などはヒトの疾患と異なることが明らかとなった。
|