研究概要 |
顎顔面領域の神経損傷は麻痺や機能不全を誘発しQOLの低下につながる。申請者は、わが国で唯一ポリ(ADP-リボース)合成酵素(Parp)欠損マウスを作製している。このParp欠損マウスを用いて、本酵素活性の抑制が顎顔面領域の損傷神経再建に有効であるかを調べ、更に損傷神経再建時に本酵素の活性阻害剤を用いることにより再建成績の向上につながる可能性を示すことを目的とする。以下の研究実施計画(1)-(3)に基づき研究を進めている。(1)Parp欠損マウスについて血液、尿、組織の生化学的、病理組織学的な精査を行い表現型を調べる。(2)Parp欠損マウス及び野生型の8週齢オスを用いて、コントロール群と外頚動脈を一時的に結紮し再灌流させる2群に分け、細胞障害の程度と治癒過程を病理組織学的に観察する。Parp欠損マウスにおいて、再灌流時の細胞障害の程度が低下しているか調べる。(3)野生型マウスを用いて種々のParp阻害剤による細胞死の抑制効果を比較検討する。本年度は、申請者らが作製したParp欠損マウスの表現型について詳細な解析を行った。Parp欠損マウスは、致死性を示さず、生殖能は正常であった。臓器、組織の形態的異常も認められなかった(Mol.Cell.Biochem.in press)。さらに、Parp欠損マウスでは、streptozotocin(STZ)投与によるβ-細胞の障害、糖尿病の誘発に対して抵抗性を示した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,2301-2304,1999)。Parp欠損マウスはSTZによるDNA損傷が誘発する細胞内NADレベルの低下及びそれに引き続く細胞死に対して抵抗性を有することが示唆された。現在、外頚動脈を一時的に結紮し再灌流する系を用いて、Parp欠損マウスの虚血後再灌流時の細胞障害に対する感受性について検討している。
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