近年、歯周炎における1つのリスクファクターとして推測されているストレスに関するいくつかの報告がなされている。しかし、ストレスと歯周病との明確な因果関係が得られておらず、また、実験方法が確立されていないのが現状である。そこで本研究では、ウィスターラットを用い、金網を用いた拘束ストレスを夜間12時間負荷し、さらにラットの臼歯部にナイロン糸を結紮する方法で実験的歯周炎を惹起させることにより、ストレス・歯周病動物モデルを用いた実験を行うことを検討した。その結果、ラットにストレスを負荷することにより、胸腺の萎縮、血漿アドレナリン濃度の上昇が認められ、拘束ストレスがラットにおけるストレスモデルとしての1実験系になることが確認された。また、同ラットに実験的歯周炎を惹起することで、ストレス群では非ストレス群に比較して歯周病が進行することがが病理組織学的に確認された。本研究の結果より、ストレスと歯周病の進行が相関していることが推測され、全身的因子であるストレスが歯周病の進行に影響を与える可能性が示唆された。また、ストレス状態では末梢の神経シナプスガ興奮し、各種の神経ペプチドが放出されて起こす、神経原性炎症(neurogenic inflammation)の概念が提唱されており、その状態についても病理組織学的に確認し、歯周病に与えている影響について調べることにした。現在のところ、ウィスターラットに10日間ストレスを与えることで、病理組織学的に神経末端部が房状に呈した像が一部確認されているが、まだ、実験匹数が少ない為、今後ラットの数を増やしてさらに検討する予定である。
|