研究概要 |
本研究者が提唱している化学進化的合成化学は、化学平衡および自己組織化を利用して熱力学的に最安定化する分子の構築を行う方法論である。平衡反応を用いれば自動的、経時的に望ましい構造に導くことができる。すなわち化学進化的に標的化合物に対し高親和性の分子を構築できる。 本年度はポルフィリン環に可変置換基としてのアルデヒド基を中心近傍に複数導入し、アルデヒドーアミン【tautomer】イミン、カルビノールアミンの平衡と自己組織化により、特定分子を取り込む部位を持つ酸化触媒の構築を試みることとした。その出発物質としてα,α'-ジクロロ-o-トルエンをメチルチオレートアニオンと反応させo-ビス(メチルチオメチル)ベンゼンを合成した。その硫黄原子の1つだけを選択的に酸化してモノスルホキシドとし、Pummerer反応を行うことによりo-メチルチオメチルベンズアルデヒドとした。これをポルフィリンに導き熱異性化により4つのアルデヒド基がポルフィリン環の同じ面側に向いた物を単離して多数のジペプチド分子のアミノ基と競争的に平衡反応を行う予定であったが、学生の研究課題変更を受けたことからこれ以降の研究は進められないでいる。今後は本方法によって得られた基質結合部位を有するポルフィリンの金属錯体が標的分子を選択的に効率的に酸化等の反応を触媒する事について検証する予定である。また、分子軌道計算を用いて仮想的な実験は行い一定の妥当性が示された。
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