研究概要 |
血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)は、血中ではリポ蛋白と結合して存在しているが、日本人では約4%に家族性にPAF-AH活性が欠損していることが報告されている。今年度の研究では、PAF-AH活性の測定を行うと共に、酵素活性欠損の原因であるPAF-AHの遺伝子変異とリポ蛋白濃度、さらに血管障害との相関を検討した。 [対象]島根医大病院内科受診者90例、および、島根難病研究所で実施している脳ドック受診者87例の血漿および抽出DNAを使用した。PAFの酵素活性の測定には、PAF Acetylhyrolase Kit(CAYMAN CHEMICAL,USA)を用いた。また、遺伝子型の同定には、PCR-RFLP法およびAllele specific PCRにより、G994-T mutationを検出した。両方の結果が一致したものをその試料の遺伝子型とし、wild(CC),hetero(AC),mutant(AA)の3つに分類した。[結果]PAF-AH活性を遺伝子型別にみると、mutant typeでは5.625±0.625(n=4,mean±SD)、hetero typeでは17.373±4.592(n=66)、wild typeでは25.704±5.746(n=107)となり、遺伝子型の違いによって活性値に有意差がみられた。血中脂質濃度(T-chol,LDL-C,HDL-C,TG)には、遺伝子型別の差異は認められなかった。PAF-AHの酵素活性と血中脂質濃度との相関を検討した結果、wild typeでは、T-chol,LDL-CおよびTGと正の相関を認め、HDL-Cとは負の相関が認められた。一方、hetero typeでは、TGと正の相関、HDL-Cとは負の相関が認められたか、LDL-Cとの有意な相関は認められなかった。脳梗塞、ラクナ梗塞の存在との関連は、現在、検討中である。以上の結果から、日本人に多いとされているPAF-AH遺伝子の変異型は、その酵素活性に大きな影響を与え、さらに血中脂質濃度にも影響を及ぼすことから、動脈硬化性疾患の遺伝子多型マーカーの一つとなる可能性が示唆された。
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