研究概要 |
急性的および慢性的な足関節障害,膝関節障害のない健常な男子大学生について,テーピングおよびブレースによる足関節固定時の拘束度,血流阻害度,床反力,重心動揺度測定から身体への影響を検討した結果,以下のような知見を得た。 拘束圧および固定による血流阻害度の影響は微少であった。また,床反力測定では,個人差による波形の不均一性が認められたが,力積,および単位時間当りの相対値に有意な差は認められなかった。 重心動揺度測定では有意差は認められなかったものの,歩行時の固定側である右足着床時では,非固定時よりも前方,右方,上方に,左足では前方,テーピング固定時が右方,ブレース固定時が左方,そしてそれぞれ上方に変位する傾向にあった。また走行時でも右足着床時では前方,左方,上方に,左足ではテーピング固定時が前方,ブレース固定時が後方,そして右方,上方に変位する傾向にあった。また,床反力の波形が大きい者では重心動揺度も大きい傾向が認められた。 以上のような結果から,足関節固定が身体に与える一過性の負の影響は微小であると考えられた。しかし,本研究の成果は各種条件下での限定状態で得られた基礎的資料である。これらが長時間連続して日常的に行われ,しかも関節部に過度の負担を強いる複雑な動作様式が付加される現実において,本研究で得られた微小な影響が慢性的に如何なる障害を誘発するかは未解明である。スポーツ障害が多発し,慢性化する現況を鑑み,さらなる追証が今後の重要な課題であると考えられる。 また,両者の固定法の比較において,テーピング固定には相当の熟練度が必要であることや固定力の持続性を加味すれば,固定が必要な場合には,脱着の容易なブレースの普及が望ましいと考えられた。
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