研究概要 |
平成11年度における本研究の実施結果は,次の通りであった。 1.平成10年度に検討した心理学における社会文化的アプローチの理論及び方法論(主に,ヴィゴツキー,バフチン,ワーチ,ロトマンらの所論)が理科の授業における教師-子ども間に展開される現実のコラボレーションの分析に適用できることを実証した。小学校の理科の授業を対象にして,2つの実験授業を組織し,このアプローチにおいて初めて授業が進行する中でのコラボレーションとしての「対話」のあり方が詳細に記述できることを示した。 2.1における分析結果が教師(授業者)にとっても授業デザインの有効なリソースになることを例証した。具体的には,1つの実験授業を組織し,その授業におけるコラボレーションを社会文化的アプローチの立場から分析した結果が担当教師の授業デザインにどのような影響を与えるかを検討した。方法は,授業者である教師が授業デザインを語る際の談話を収集し,その中で分析結果がどのように位置づけられているかを質的に検討した。結果としては,こうした分析は,授業の反省に際して有効であるとともに,教師の授業観の変容にも大きく寄与することが明らかとなった。
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