研究概要 |
日々成長を続けるインターネット上の膨大な情報源の活用を念頭に,個々の利用者の視点の重要度に応じて情報断片(各頁)の関連度を動的に生成する新しいデータモデルを考え,情報幾何学の種々の関数族上の測地線を用いて,意外性を秘かに期待した情報探索や他人の視点の重要度の推定を実現する方法をこれまで提案してきた.特に応用面では,その関数族が持つファジィ平均化作用に着目しながら,実施例によってこれらの提案が有効であることを示した.また理論面では,(部分多様体の自己平行性という)ある条件のもとで反復計算を必要としない測地線の直接的な計算法を導いてきた. 本年度は,残された課題として,より一般の(自己平行でない)場合における,効率的な測地線の近似計算法を導くとともに,その背後に隠れた凸計画の内点法と共通する数理構造について議論した.すなわち,半正定値問題に対する行列空間上の勾配系と,先の推定問題に対する測地線との対応関係を指摘し,さらに,後者の問題においても多項式時間のアルゴリズムが存在しうることを示した. 一方,応用面での検討としては,実際にモデルを規定するために予め必要となる関連度の素データの収集を考え,Webロボットによるリンク構造解析を行なった.ここで,あるトピックス(典型的な視点)を表す頁から順に捜し出された各頁のリンク数は,その視点に対する情報内容の価値の高さや関連性の強さを表すものと考えた. これらによって,「利用者の観点に応じて動的な構造化を行なうデータモデルの基本的な枠組を提示し,その実現可能性を明らかにする」という当初の目標は,ほぼ達成されたものと思われる.但し,実用規模でのシステム構築法はもちろんのこと,応用上で有効となる経路や関連度の素データの選び方をはじめ,アルゴリズム論的なモデルの特性などに関しても未解決な課題があり,引続きこの方面の検討が必要である.
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