本研究では、知覚機能を持つロボットを思考の主体とし、それを我々の生活環境におくことによって、実世界とのインタラクションが可能な状況を設定し、その中でロボットが知覚・行動を介して思考する枠組みを構築することを試みた。特に、ロボットに対する依頼表現の解釈、あるいはそれに応じた適切な行動計画の生成に焦点をあて、これらに対する適切な問題解釈を、実世界とのインタラクションを通じて行なう方法について検討した。 昨年度は、1)自律ロボットの作成、2)ロボットのAPI決定、3)外部世界の知覚アルゴリズムの作成、4)各種行動の上記シーンの解析結果を与える影響の抽出アルゴリズムの作成、などの要素技術の開発を行ない、これらをベースとして、行動のプリミティブに1対1に対応する言語表現を対象として言語獲得アルゴリズムの開発を行なったが、各要素技術の基本性能には問題が残されていた。 本年度においては、これら要素技術の高度化と、それらを統合したより高度な知的処理の実現を目指した。要素技術の高度化としては、ロボットに対する眉の付加とこれを用いた表情合成を行った。表情によるロボット内部の状態提示が可能になることで、利用者との間でのより豊かなインタラクションが実現された。また、シーン解析のアルゴリズム(視覚処理)に環境適応処理を組み込み、耐性を向上させることで、システムの動作が安定した。統合処理では、プリミティブ単体では実現できない複雑な行動を、どのようなプリミティブの組合せによって構成すべきかを、各種行動のプリミティブとその影響の関係対の組合せ問題を解くことによって求めるアルゴリズムについて検討した。以上によって、知覚・行動・思考の統合処理に基づいて、言語理解・獲得と行動計画の立案を行なう知的なシステムの基礎的な枠組みが実現できた。
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