研究課題/領域番号 |
10878082
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内海 博司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20025646)
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研究分担者 |
橋本 光正 京都大学, 原子炉実験所, 教務職員 (70293975)
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研究期間 (年度) |
1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1998年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | Ku70とKu80複合体 / DNA二重鎖切断 / 潜在性致死損傷 |
研究概要 |
申請者らは、過去数年来、電離放射線の潜在性致死損傷(PLD:potentlally lethai damage)の修復について研究してきた。そして、従来の修復速度の遅いPLD修復とは大きく異なり、高イオン強度で阻害される修復速度の速いPLDが存在することを見いだした。 最近、高等動物細胞おいて電離放射線のDNA2重鎖切断の修復には少なくとも2種類(RAD54複合体が関与する相同組換修復とDNA-PKcs、Ku70とKu80複合体が関与する非相同組換末端結合修復)あることが明らかになった。このDNA-PK複合体はイオン強度に敏感で、0.15M NaCl中では安定であるが、0,35M NaCl以上の高塩濃度中ではDNAの2重鎖切断端から遊離することが報告されている。最近、DNA-PK活性の無いSCID細胞では、このPLD修復を保持していることが報告された。そこで、イオン強度の変化によってDNA-PK複合体が解離することによって、DNA2重鎖切断修復が阻害され、速いPLD修復が阻害されると推論した。 また、高等動物細胞おいて2重鎖DNA障害修復遺伝子群が分離され、その遺伝子をノックアウトした細胞やマウスが作られ、その細胞が消失した機能を解析することが可能になった。特に、DT40というニワトリBリンパ球細胞株から、既に放射線による細胞死のターゲットと考えられるDNA二重鎖切断の修復酵素群(相同組換えや非相同組換えの遺伝子群)をノックアウトした変異細胞(KU70^<-/->やRAD54^<-/->)や高感受性のダブルノックアウト変異細胞(KU70^<-/->/RAD54^<-/->)が作られ、放射線感受性や細胞周期の研究がなされている。この細胞群を用いれば、本目的の研究が達成されるとして検討した。 ニワトリBリンパ球DT40細胞株及び、この細胞株のDNA2重鎖切断の修復酵素群である相同組換修復酵素であるRAD54をノックアウトした放射線感受性細胞株(RAD54^<-/->)、非相同組換末端結合修復の遺伝子であるKU70をノックアウトした放射線感受性の変異細胞株(KU70^<-/->)、そしてこの両修復系の遺伝子をダブルノックアウト高感受性の変異細胞株(KU70^<-/->/RAD54^<-/->)を用いて、X線照射後直ちに、高張塩緩衝溶液(0.5M NaCl/PBS)で20分間処理した細胞と、しない細胞の生存率の差を検討した。結果は、親株のDT40細胞とKU70^<-/->では、高張塩緩衝溶液でX線感受性になったが、RAD54^<-/->とKU70^<-/->/RAD54^<-/->は、感受性にはならなかった。この結果は、予想と反して、RAD54複合体が支配する相同組換修復酵素系が高張塩緩衝溶液で阻害されることが明らかになった。細胞周期に及ぼす高張塩緩衝溶液での感受性の変化はGl期でなくS期であったことから、考えると相同組換修復がS期依存性であることから、矛盾は無いのかも知れない。
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