研究概要 |
本研究の目的は,勝木らによって開発された突然変異モニター遺伝子rpsLを有するトランスジェニックマウス(HITECマウス)と放射線高感受性のscidマウスを交配することにより,放射線に対して鋭敏かつ簡便なin vivo突然変異検出系を確立することである。 昨年度報告したように,受精卵移植法では健常なscid-HITEC(F1)マウスが得られなかったので,自然交配によって得られたF1マスウをさらに交配してscidヘテロおよびscidホモのHITECマウスの作成を行った。まず最初に得られた130匹のF2マウスを調べたところ,scidホモの状態でrpsL遺伝子を有しているマウスは7匹と極めて少ないことがわかった。そこで,ここで得られたF2マウス(HITEC/scidヘテロマウス)をさらに交配して充分な数のF3マウスを作成することにした。その結果230匹のF3マウスが得られ,PCRによりrpsL遺伝子の存在やDNA-PKcs遺伝子における変異の有無を調べたところ,そのうち19匹がscidホモのHITECマウス(雄12匹と雌7匹)の遺伝子型を示した。残り100匹のF3マウスについては,引き続き遺伝子型の解析を進めているところである。そこで,これら19匹のscidホモHITECマウスと12〜14匹のscidヘテロHITECマウスに3あるいは5GyのX線を照射し,照射後一週間目に解剖して脳,胸腺,肝臓,脾臓,精巣を分離した。しかし5Gy照射したscidホモHITECマウスのほとんどは死滅してしまい,結局は雄,雌それぞれ一匹の臓器試料しか得られず,X線照射線量と解剖時期についてはさらに検討する必要があることがわかった。現在,3Gy照射したマウスより臓器を収集するとともに,肝臓などの大きな臓器試料についてはDNAを描出し,rpsL遺伝子に生じた突然変異率を算定しているところである。
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