研究概要 |
現在最も注目されている抗腫瘍活性化合物の一つに,イチイ科植物より単離されたtaxolがある.天然から,新規化合物,活性の強い化合物,活性化合物への誘導が容易で大量供給が可能な化合物の探索を意図し.ノースカロライナ大学K.H.Lee教授と共同で中国南部に植生するTaxus chinensis,Taxus yunnanensisの成分研究を開始した. (1)中国産イチイ科植物の成分検索:Taxus chinensis/Taxus yunnanensisのエタノール粗抽出物を溶媒で分配した.Taxus chinensisの塩化メチレン層のをシリカゲルカラムクロマトよる分離精製を行い,得られた画分成分検索から新規taxaneジテルペンである19-acetoxytaxagifineを単離構造決定し,あわせて13種の既知化合物を同定した.このうち1種は分子内にエノールエーテル構造を有する興味深い大環状化合物であり,他の研究グループとほぼ同時に単離構造決定した化合物である.同様に抽出,分離精製を行ったTaxus yunnanensisの塩化メチレン層より2種の既知化合物を単離同定し,現在引き続き成分検索を続行している. (2)生物活性試験と活性構造相関の研究:単離した:taxoid化合物のin vitroにおける抗腫瘍活性試験を行った結果,非アルカロイド型のtaxoid化合物に腫瘍細胞に対する活性を見いだした.特にtaxol耐性株に対し,非アルカロイド型のtaxoid化合物が活性を示すことは薬耐性腫瘍細胞株に対する研究に有益な情報を与えるものと考えられる.Taxoid成分と同時にフラボノイド化合物4種を単離同定し,各種培養腫瘍細胞に対する細胞毒性試験に付し,そのうちの一種に細胞毒性活性を見いだした.現在,構造活性相関および発ガン抑制活性など他の生物活性も検討している.
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