野生型のカタラーゼ1について幾つかの測定を行った。活性型の変化に伴った構造の変化を捕らえようとしたが、その差が小さく、構造の直接測定は困難を極めた。そこで、活性型転移による構造変化の大きい変異体作成のために、ランダム伸長変異法を用いた。 ランダム伸長変異法は進化工学的方法である。工学的に酵素を改良するといずれ頭打ちとなる。また、自然界で良く最適化が進んだ酵素はそれ以上改良することが難しい。これらは対象となる酵素が配列空間上の山の頂上付近に位置するからである。この一般的な問題点をランダム伸長変異で解決できることを示した。カタラーゼのC末に付加したランダム伸長変異ではランダム点変異に比べて、高い熱安定性の変異体は10倍の頻度で得られた。伸長変異を加えると、配列空間の次元が増え、新たな改良の余地が与えられる。 このようにして得られたカタラーゼの集団は活性でも多様性に富んだものであった。また、問題となる活性型の転移現象の程度にもかなりの幅が存在した。このことは前に示された二つの活性型の存在がアミノ酸配列に依存する現象であることが分かった。
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