細胞内での選択的蛋白輸送は、細胞内小器官の蛋白質組成を正常に保ち、細胞が正しく機能するために重要である。ゴルジ体以降の分泌経路およびエンドサイトーシス経路における選択的蛋白輸送には、輸送される蛋白質の細胞質領域に存在するシグナル配列が必要である。最もよく見られるシグナル配列の一つであるチロシン・シグナルには、エンドサイトーシスやリソソーム局在のほか、トランスゴルジ網(TGN)局在シグナルとして機能するものもあるが、その分子機構は明らかではない。そこで、チロシン・シグナルによりTGNに局在する蛋白質であるTGN38をマーカー分子として、そのTGN局在を失った変異細胞を、gene trap法とantisense法を組み合わせた方法で樹立することにより、培養細胞での新たな変異導入法の開発を目指した。 まず、IL-2受容体(Tac)の細胞外および膜貫通領域と、TGN局在シグナルを持つTGN38の細胞質領域とのキメラ蛋白を遺伝子導入したMDCK細胞を作製した。この細胞を用いて、ネオマイシン耐性遺伝子ベクターを導入し、G418耐性株、すなわちランダム・インテグレーションの頻度を調べたところ、3-5X10^<-5>であった。 gene trapベクターとしては、splice acceptorの下流に、ネオマイシン耐性遺伝子を繋ぎ、その下流にさらに、anti-sense RNAを合成するためのプロモーターを逆向きに配置したものを作製中である。
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