研究概要 |
Neuropeptide Y(NPY)は、中枢神経系に最も豊富に存在する極めて重要な神経ペプチドであり、その受容体も平成9年までにYl,Y2,Y5サブクラスがクローニングされた。Y3受容体は私達が発見したサブクラスであるが、リガンド結合の難しさのため、Y5とともに記憶・摂食行動に中枢で重要であるにかかわらず、まだクローニングされていない。私達は、分子生物学的な手法で、記憶・摂食行動に重要なこの受容体のクローニングとノックアウト動物による機能解析を目指している。平成10年度は以下の実験により、ヒトNPY-Y3受容体のクローニングを試みたが、まだ未知Y3受容体を得るまでには到らなかった。 ヒトNPY-Y3受容体を含むcDNAライブラリーのRT-PCRによるクローニング ヒト副腎cDNAライブラリーより、膜貫通部位を構成するドメインの核酸配列より合成したオリゴヌクレオチドをプライマーにしてYlおよびY2受容体に相同性のあるクローンを得た。コンピュターサーチにより未知のY3受容体らしきクローンは残念ながら検出できなかった。この方法でYl,Y2は検出可能であるので、もしY3が相同性の高い遺伝子であるならば、ハイブリダイゼーション条件を変えて繰り返すことにより、Y3受容体をクローニング可能と考えられる。クローンを発現させた細胞を用い、、Y3受容体リガンド([3H]Peptide YY,[3H]-NPY)の結合試験をすることによりY3受容体mRNAの存在の確認が可能と考えている。 将来的には、マウス遺伝子ライブラリーのスクリーニングをcDNAの単離と平行して行い、平成11年からY3ノックアウトマウス作成にとりかかる予定である。
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