研究課題/領域番号 |
10878162
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
由井 伸彦 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (70182665)
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研究分担者 |
大谷 亨 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (10301201)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1999年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1998年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 自律型材料 / 酵素分解 / 酸化―還元 / デキストラン / ニコチンアミド / グルコースオキシダーゼ / イオンコンプレックス / 酸化-還元 |
研究概要 |
分解産物をインプットとして材料の分解が抑制されるフィードバック機構を付与することにより、生体内で振動型に分解する「自律型」材料の構築を目指して研究を推進してきた。昨年度は、酸化還元能を有するニコチンアミド(NA)で修飾したデキストラン(NA-Dex)とカルボキシメチル化デキストラン(CMD)とを合成した。さらに、デキストラン(Dex)の分解により生成するオリゴ糖を基質としたグルコースオキシダーゼ(GOD)によるNA部位の酸化により、NA-DexとCMDとのイオンコンプレックス形成を確認した。本年度は、そのイオンコンプレックス形成を制御する要因として1)水溶液中のNA-DexとCMDの濃度、2)NA部位の酸化速度、に着目して実験を行った。GODの触媒作用により発生する過酸化水素を、種々の濃度のNA-DexとCMD混合水溶液(過酸化水素、NA-DexとCMDのモル比は一定)に添加すると、イオンコンプレックス形成の指標となる500nmの透過率は一定のラグタイムの後に減少した後に再度増加した。このことは、イオンコンプレックスの形成・解離が自律的に制御されていることを示していた。このとき濃度の増大に伴っての透過率の最小値は小さくなる傾向を示した。このことは、NA部位が還元型から酸化型に置換する速度は濃度に依存しないが、その後のイオンコンプレックス形成は水溶液中の酸化型NA-DexとCMDとの衝突確率に依存していることを示唆していた。また、NA-DexとCMDの濃度を一定にして水溶液に添加する過酸化水素濃度を増大させると、ラグタイムが短くなる傾向がみられたが、透過率が減少する挙動が同じであった。このことは、過酸化水素とNA部位との衝突確率が過酸化水素濃度の増大に伴い大きくなり、結果としてNA部位の酸化速度が大きくなったことを示唆していた。このように、材料の濃度からイオンコンプレックス形成速度、過酸化水素濃度からNA部位の酸化速度を制御可能であることが明らかとなった。昨年度の研究成果から、NA-DexとCMDの水溶液中に添加するDex濃度を変化させると、Dexの濃度に伴って、Dexの酵素分解物(オリゴ糖)を基質としたGOD触媒による過酸化水素の生成量を制御できることがわかっている。このことから、Dex,NA-Dex及びCMD存在下において、これらの濃度やモル比によりDex鎖の酵素分解に伴うイオンコンプレックス形成・解離を任意に制御できるものと考えられる。以上、自らの分解産物を利用してイオンコンプレックス形成と解離による自律制御型生分解性ヒドロゲルの基本設計を確立した。
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