研究概要 |
本研究の最大の目標としたのは3次元のシュレーディンガー作用素の波動作用素の、伸張群の生成作用素による新しい表示を得ることであった。これは当初の予想に反して極めて困難な問題であることが判明し、まず模型としてのFriedrichs-Faddeev modelに対して理論を構築した。さらにシュレーディンガー作用素のスペクトル表示やレゾルベント評価法との成果を総合することにより、最近3次元のシュレーディンガー作用素に対して完全な証明を得ることができた。このことによりS行列に関するレビンソンの定理をC*環の立場から見直した公式が得られた。これらは波動作用素、散乱行列に対する位相的な接近法というべきものであり、ほぼ抽象的な理論であって、必要なレゾルベント評価等があれば他の数理物理学における散乱問題に適用可能である。結果は現在、論文にまとめている。 研究分担者のS.Richardは日本のシュレーディンガー作用素の研究グループ、C*環の研究グループとの交流を頻繁に行った。また、海外の研究者、特に米国のGesztesy教授,フランスのKellendonk教授との共同研究が重要な役割を果たした。講演した国内外の大学はオルセー大学解析セミナー(フランス、2011年5月、9月)、立命館大学(解析セミナー、2011年6月)、リヨン大学解析セミナー(フランス、2011年9月)、ポンチフィカ、カトリック大学解析セミナー(チリ、2011年11月)、チリ大学解析セミナー(チリ、2011年11月)、コロンビア大学解析セミナー(米国、2012年3月)である。
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