研究概要 |
カチオン性ポリマー鎖であるPDMCの重合度を60と一定に保ったまま疎水鎖の重合度を,8,25,50,75と変えた4種のポリマーを合成し,その水溶液の界面活性/不活性の検討を行った.純水系では,重合度8のポリマーは界面活性であるが,その他3種は,界面不活性であった.よって,疎水鎖は重合度20以上が界面不活性性発現の必須条件であることがわかった.また,水溶液中では,界面不活性性を示す3種のポリマーは,ミセル会合体を形成しているのに対し,界面活性なポリマーは,ミセル会合体を形成していなかったことから,鏡像電荷効果に加え,「ミセル形成」が界面不活性となる第2の要因であることが判明した. さらに,温度に応答して,界面不活性/界面活性の転移を示すことを昨年確認した,PNIPAmとカチオン性親水鎖からなるジブロックポリマーの転移温度に対するブロック鎖長と添加塩の影響を調査した.カチオン鎖とPNIPAm鎖の長さが同等の場合は,ホモポリマーと同様の結果が得られたが,カチオン鎖が長くなると,転移温度は上昇し,さらに長くなると,転移が起こりにくくなることが判明した.これは,PNIPAm鎖をカチオン鎖が取り囲んでしまうためと考えられる.また,PNIPAmホモポリマーと同様に,転移温度が塩の添加により低下することを確認することが出来た.さらに,添加塩の種類を様々に変えたところ,水の構造を破壊するいわゆる「構造破壊イオン」の性質が強いイオンほど転移温度の低下が大きいことが判明した.これは転移現象がPNIPAm鎖の水和構造とその変化によるものであることを示唆している. 以上のように,PNIPAm鎖とイオン鎖からなるジブロックコポリマーは,温度により界面活性/不活性の転移を示すこと,その転移温度は,ブロック鎖長や塩の添加,そして添加する塩の種類により制御できることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,今年度で終了するが,ポリイオンコンプレックスに関する成果から,温度に応答して反転するミセル系の構築が可能であることが判明し,薬物輸送系を想定した,さらなる機能材料開発研究に発展可能であることが判明した.さらには,界面不活性高分子への光応答基の導入法が確立できたため,光照射による界面不活性/界面活性の転移制御が可能と考えられ,新規機能材料開発に結びつく可能性がある.
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