研究課題/領域番号 |
10F00083
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 外国 |
研究分野 |
触媒・資源化学プロセス
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
楠元 芳文 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 教授
|
研究分担者 |
MD. Abdulla-Al-Mamun 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 可視光応答 / ナノ複合体 / 金属ナノ粒子 / 光触媒 / がん治療 / ハイパーサーミア / がん細胞 / 太陽電池 / 可視光応答型光触媒 / ドーピング / ガン治療 |
研究概要 |
可視光で応答する光触媒-金属ナノコンポジットおよび磁性ナノ粒子-金属ナノコンポジットの開発とがん治療への応用に重点的に取り組んだ。1ナノメートルは10億分の1メートルのことであり、粒子の大きさがナノメートルを単位として測定されるような小さなものをナノ粒子、それらの複合体をナノコンポジットなどと呼ぶ。銀Agと酸化チタンTiO_2からなるナノコンポジットや金AuとTiO_2からなるナノコンポジット、さらには酸化チタンの結晶内部に鉄(Fe)を1~10%入れた(ドープという)鉄ドープ酸化チタンに銀Agを付けたナノコンポジットを合成し、詳しくそれらの性質を調べた。そして、がん細胞としてヒーラ細胞(ヒト子宮頸部がん細胞)を用いて、細胞死滅活性を調べた。これらの研究から、光触媒(酸化チタンおよび鉄ドープ酸化チタン)に光を照射して発生する活性酸素(OHラジカルなど)によるがん細胞死滅効果と、金や銀が光を吸収して(プラズモン吸収という)発生する熱によるがん細胞死滅効果が協同的に作用してがん細胞死滅効率が飛躍的に向上することを発見した。そして、詳しい仕組みの詳細を明らかにした。なお、金や銀のナノ粒子のように光を照射して発生する熱で温度を上昇させて、がん細胞を死滅させて治療することをハイパーサーミアという。酸化鉄のような磁性ナノ粒子に交流磁場を印加することで、温度を上昇させてがん細胞を死滅させることも出来る。これもハイパーサーミアという。薄い金で覆ったFe_3O_4ナノキューブを合成し、特性を詳しく調べた。そして、ヒーラ細胞に対するがん細胞死滅を調べた。交流磁場を印加することにより酸化鉄により発生する熱と金が光を吸収して発生する熱の協同効果によってがん細胞を100%死滅させることができることを発見した。仕組みも含めて詳しく考察した。Fe_3O_4とTiO_2からなるナノコンポジットでは,光を照射して発生する活性酸素(TiO_2から発生)と交流磁場を印加することにより酸化鉄により発生する熱との協同効果も発見した。Fe_3O_4以外のγ-Fe_2O_3やα-Fe_2O_3についても交流磁場によるハイパーサーミアを見いだした。一方、太陽電池についても調べた。TiO_2,Fe_2O_3,ZnOに金を付けた薄膜結晶を用いて作製した太陽電池は金を付けない場合より太陽電池としての効率が向上することを見いだした。可視光を吸収させるための色素を使用しない太陽電池の開発へ繋がる成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「可視光応答型光触媒-金属ナノコンポジットの開発と応用」の研究の目的は、がん治療用として実際に可視光で働くナノコンポジット(ナノメートル(10億分の1メートル)単位の大きさをもつ複合体)の合成にチャレンジすること、および光だけでなく磁場を用いたがん治療(ハイパーサーミア)にチャレンジすることであった。本研究では、可視光で働くナノコンポジットについて、いずれも生体に無害とされている、可視光で働く金ナノ粒子や可視光で働く鉄ドープ酸化チタン、可視光でも働く各種の酸化鉄磁性ナノ粒子を用いたナノコンポジットの合成に成功すると共に、さらに磁場を用いたがん治療にも成功し、当初の計画以上の成果を得たからである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は平成23年度で終了した。今後は、得られた成果を生かすために、お薬であるナノコンポジットをがん腫瘍のみに確実に届けるシステムの開発が重要となる。がん腫瘍と正常組織が接する血管壁の穴が前者の方が後者よりも大きいので、ナノコンポジットの大きさをコントロールすることによって、正常組織には運ばれずがん組織のみに運ばれるようにすること、つまり、選択的がん治療が可能となる。更に、特定のがん細胞がもつ特有の機能物質(抗原やペプチドなど)やがんの増殖を助ける物質と結合する物質(抗原など)をナノコンポジットに付けることで、さらに確実にがん腫瘍のみに薬を運ぶこと、つまりがん腫瘍のみを治療することが可能となることが期待される。このように、副作用のないがん治療システムの開発が本研究課題の今後の重要な推進方策である。
|