研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、成体マウス嗅球で見られる欠落した顆粒細胞サブタイブが局所神経回路内で補償的に組み込まれる現象のメカニズムの解明である。昨年度の研究では、嗅球局所でmGluR2を発現する顆粒細胞サブタイプをイムノトキシン細胞標的法を用いて除去すると、赤色蛍光タンパク質mPlumの導入により可視化された新生顆粒細胞、および赤色蛍光タンパク質DsRed2を発現するマウスから移植された顆粒細胞について、細胞除去領域ではmGluR2を発現するサブタイプが優先的に組み込まれることを観察した。本年度の研究により、mPlumで可視化された新生顆粒細胞および移植された顆粒細胞でmGluR2を発現するサブタイプが、細胞除去を起こした嗅球局所神経回路内でもスパイン構造を有し、そのスパイン構造が興奮性前シナプス終末に局在するVGLUT1と近接する様子が免疫組織学的に観察された。また、移植された顆粒細胞のスパイン構造を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析したところ、細胞除去領域では健常領域に比べて、mGluR2陽性顆粒細胞のスパイン頭部が有意に大きくなる現象を確認した。一方、mGluR2陰性顆粒細胞ではそのような変化は見られなかった。これらの結果は、嗅球局所回路では、既存の顆粒細胞サブタイプが欠落した環境下でも、欠落しているサブタイプの新生顆粒細胞が嗅球局所から興奮性シナプス入力を受け、かつその興奮性入力をより効率よく受けることを示唆するものである。嗅球には神経細胞サブタイプの不足が生じた場合に、新しい神経細胞を効率よく利用して不足した神経細胞サブタイプを補い、神経回路の恒常性を保つ機構が備わっていることが本研究により示唆された。
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The Journal of Neuroscience
巻: 31 号: 29 ページ: 10540-10557
10.1523/jneurosci.1285-11.2011
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_230720_j.html