研究概要 |
相間移動触媒を用いた極めて一般性の高い触媒的不斉四置換アレン合成法の確立に、世界に先駆けて成功した。手法としてはアレン1,3-ジカルボキシレートを基質として用い相間移動触媒存在下求核的に活性化し、イミンまたはアルキルハライドといった求電子剤との反応により多種多様な四陳置換アレンを得る。特にイミンを求電子剤として用いた反応においてはジアステレオ選択性とエナンチオ選択性の同時制御が必要となる点が困難であった。またアルキルハライドを用いた反応ではレジオ選択性とエナンチオ選択性の同時制御という異なる問題が挙がりこの解決には多くの時間を要した。最終的に触媒として新しく相間移動触媒の構造最適化を行うことにより、高い立体選択性で目的化合物が得られる条件の確立に至った。このようにして構築された手法で得られる四置換アレンは合成化学的にこれまで入手が困難であった化合物群であり、今後これらを低分子医薬品の部分骨格に用いるなどの応用が期待される。また本生成物をさらに合成中間体とした複雑な分子合成にも適用可能であると考える。また本反応開発に用いた相間移動触媒は、金属を含まない普遍的な元素の身を用いた有機分子触媒であり、その合成における環境負荷は少なくなると期待される。本研究成果はNature publishing groupの姉妹誌であるNature Chemistryに掲載され、またドイツ化学会の運営するChemistry Viewsでハイライトされ、京都新聞においても紹介されるなど、広く評価される研究成果となった。
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