研究概要 |
本年度では、「METH 曝露によるマクロピノサイトーシスの過形成が、神経毒性作用にどう関わっているか」、「METH 曝露によるマクロピノソーム過形成がもたらすリソソーム機能変化」について検討を行い、『METHによる新たな細胞死経路機序の確立』を目指すこととした。 第一に、GFP-Ras及びGFP-Rac1を用いた蛍光観察では、METH曝露2時間後の細胞内空胞と局在が一致した。また、RasインヒビターのFTS及びRac1インヒビターのEHT1864を前投与したところ、METH曝露による細胞内空胞形成が有意に消失した。以上より、METHによる細胞内空胞がマクロピノサイトーシス経路に沿って進行していることが確認された。 第二に、リソソームの活性化について検討した結果、lamp1,2の発現はMETH曝露の時間依存的に上昇し、カテプシンLのプロセシングは有意に減少した。また、オートファジー関連分子変動では、LC3-IIの発現は有意に上昇する一方、p62の発現減少が認められなかったことから、METH曝露後では、オートファゴソームの形成までは進行しているが、オートファゴソームの分解が阻害されている可能性が確認された。以上より、METH曝露後のマクロピノソーム過形成により、マクロピノソームからリソソームへの移行に伴うリソソームの肥大化により、リソソームの正常機能が低下し、本来のオートファジーの流れを正常に維持できなくなることで、細胞内にMETHを含んだ未消化物質が増大し、最終的に細胞死を引き起こしている可能性が考えられた。 以上の結果を総括すると、高濃度METHの曝露により、細胞内でマクロピノサイトーシスが過剰に形成され、このマクロピノソームがリソソームと融合することで、リソソーム内での正常な機能が保てなくなり、最終的に細胞死に至ると考えられた。
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