研究概要 |
平成23年度は,主としてアポロリターンサンプルのX線CTデータ解析を実施した.また,今年度は世界の地盤工学分野の研究で用いられることの多い標準砂のCTデータ解析も実施した.これら標準砂は既往の研究で多くの要素試験が実施されているため,標準砂の粒子形状を定量化できれば,粒子形状が砂のバルク特性に及ぼす影響を定量的に評価することができる.本研究で得られた様々な砂の3次元粒子形状データは既往の研究にはほとんど見られないものであり,重要な成果の一つと考えられる.いくつかの形状指標を算出し,それぞれの砂での比較を行うとともに.既往の研究で得られている砂の間隙比範囲やせん断強度と形状指標との相関について検討した.その結果,粒子の角張りが力学的特性に大きく影響することがわかった. 本研究で用いる個別要素法(DEM)では,そのパッキング方法が問題とされることが多い.DEMでは粒子の摩擦係数を小さくして密詰めにするが,現実の操作で摩擦係数を変えることは困難である.そこで,3種類の異なる方法で試料を作製し,DEMによる単純せん断シミュレーションを行って試料作製方法が粒状体のバルク特性へ及ぼす影響を検討した.試料作製方法は,粒子間摩擦を小さくして圧縮する方法(FC法),圧縮時間を変える方法(TC法)および繰り返し単純せん断による圧縮(CC法)の3種類である.それぞれの方法で試料を作製して単純せん断を行った結果,FC法で作製した試料はCC法で作製した試料と比較して,初期試料内に作用する粒子間せん断力が小さく,初期配位数が大きいことがわかった.また,応力ひずみ関係においてはCC法で作製した試料の方がFC法よりも広い弾性領域が得られた.しかし,一旦接触点が滑り出すとその影響が失われるため,ピークせん断強度については大きな差異が見られなくなることが明らかとなった.
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