研究概要 |
量子臨界性を示すYbAlB4系化合物及び近藤半導体YbB12の電子構造を、光電子分光を用いて調べた。外部パラメータの制御無しに量子臨界性を示す重い電子系超伝導体β-YbAlB4では、Yb価数の評価を硬X線光電子分光を用いて行った。その結果、Yb3d内殻準位に二価と三価の両方のピークが明瞭に観測され、およそ2.8価の価数揺動状態にあることがわかった。これは、基底状態が量子臨界点にある物質としては他に例がない強い価数揺動である。この結果は、Physical Review Letters誌に論文が掲載されている。さらに、FeドープによりFermi液体金属から反強磁性へ基底状態を制御できるα-Yb(Al,Fe)B4では、同様にYb価数を調べると、量子臨界現象を示すドープ量(約1%)近傍で0.02程度の価数の飛びが観測された。これらの結果は、臨界価数揺らぎという新しいタイプの量子臨界現象が実現している可能性を示唆している。また、近藤半導体YbB12においては、今まで表面状態の存在により光電子分光では明確に観測されていなかった混成ギャップについて、時間分解光電子分光を用いて検証した。その結果、超高分解能レーザー光電子分光で見積もられた混成ギャップの開く特徴的な温度T*~100K以下で、光励起電子の長時間緩和成分(時定数100ps以上)が急速に発達することが分かった。これは、真のギャップがT*以下で確かに開いていることを示しており、時間分解光電子分光を用いてYbB12における混成ギャップの特性温度を明確に定義することができた。
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