研究課題
特別研究員奨励費
炭素-水素結合は有機化合物に普遍的に見られる化学結合である。この結合を選択的に切断し、新たな化学結合形成に利用する研究は、天然資源に乏しいわが国において効率的な化学合成プロセスの構築につながる重要な研究である。これまでに金属触媒に対して配位可能なヘテロ原子を有する配向基を利用した、ベンゼン誘導体とプロモアセチレンの直接クロスカップリング反応がパラジウム触媒により進行することを見出している。今回、複数の配位点を持つ配向基として、8-アミノキノリンや2-ピリジニルメチルアミン由来のアミド基を用いた直接アルキニル化反応を前年度に引き続き検討した。その結果、添加剤として酢酸セシウムを用いると、良好な収率で芳香族オルト位炭素-水素結合の直接アルキニル化が進行した。また、これまで適用が困難であった電子不足性置換基を有する安息香酸アミドであっても効率良く反応が進行した。さらに、同じ配向基を利用してより反応性の乏しい炭素-水素結合を有する脂肪族カルボン酸アミドのアルキニル化反応を検討したところ、添加剤に酢酸銀と塩化リチウムを用いることでアミドのβ-位の直接アルキニル化が良好な収率で進行した。アミノ酸誘導体や胆汁酸などの生物由来のカルボン酸アミドのアルキニル化に対してもが可能であり、生体内分子の修飾に有効であることがわかった。一方、パラジウム触媒では適用が困難であった含窒素複素環を配向基とする芳香族化合物の直接アルキニル化が、ルテニウム触媒により進行することがわかった。本触媒系ではピバル酸セシウムが効果的な添加剤であり、ピリジンやピリミジン、ピラジンなど様々な窒素配向基が適用可能であった。また、活性水素を持つイミダゾールを有する基質でも良好な収率でアルキニル化体を与えた。したがって、配向基と金属触媒を適切に選択することで新たな反応性を見出すことが期待できる。
すべて 2012 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Orgnic Letters
巻: 14 号: 1 ページ: 354-357
10.1021/ol203100u
Journal of the American Chemical Society
巻: 133 号: 33 ページ: 12984-12986
10.1021/ja206002m
巻: 133 号: 38 ページ: 14952-14955
10.1021/ja206850s
http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~chatani-lab/