研究概要 |
申鶴雲さんは今まで酵素免疫測定(ELISA)において、カチオン性高分子積層膜表面のブロッキング剤の高い被覆率により、従来のポリスチレンプレートより高い測定感度を有することが明らかとなった。さらに多孔質膜表面に高分子積層膜を作製し、抗原溶液を多孔質膜に透過する際に反応させ、従来の拡散に支配された反応から抗原の局所的な濃縮反応に変換させることにより、精密かつ迅速な検出できることが明らかとなった(H.Shen., J.Watanabe, M.Akashi, Polym.J. 2011, 43, 35.)。昨年度は(1)疎水性アミノ酸であるフェニルアラニン(Phe)をポリ(γ-グルタミン酸)(γ-PGA)に修飾し、水中で自己会合により形成した生分解性ナノ粒子(γ-PGA-PheNPs)を用いてELISA基板としての応用について検討を行った。γ-PGA-PheNPsの表面は親水性のカルボキシル基が出ているので、抗原や二次抗体の非特異吸着を効率強く抑制できた(H.Shen, M.Akashi, Analytica Chimica Acta, in preparation)。 (2)またカチオン性アミノ酸のアルギニン(Arg)をγ-PGA側鎖に修飾することにより両性電解質ポリアミノ酸を合成し、水中で自己集合することによりナノ粒子を作製した。Argの導入率を制御することにより、アニオン性カルボキシル基とカチオン性グアニジウム基間の静電相互作用を制御でき、ナノ粒子のサイズと表面電荷を制御できた。さらにナノ粒子と反対電荷を持つタンパク質を効率よく、かつ安定に担持できることが明らかとなった(H.Shen, T.Akagi, M.Akashi, Macromol. Biosci., revised)。このような両性電解質アミノ酸ナノ粒子は新規なドラックデリバリーキャリアとして有用であると考えられる。
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