研究課題
特別研究員奨励費
地球磁場が気候に与える影響を検証するため、以下の研究を行った。1.複数の地磁気逆転を含む110~70万年前の大阪湾堆積物の古環境解析を行った。本年度は、特に、地磁気の逆転が起こらなかったステージ25の珪藻・硫黄・花粉を分析し、海水準と気候を復元した。また、先行研究による年代モデルの見直しを行い、より高精度な年代軸を入れた。さらに、アリゾナ大学で炭素同位体分析を行い、新たな古環境指標を得た。その結果、全体的な気候変化は、日射量変動に起因する氷体量変化によって生じる海水準変化と調和的な変動を示し、通常、地球の気候はミランコビッチ理論で説明できることを確認した。しかし、ステージ19と31では、最高海面期に日射量変化では説明できない寒冷化が生じていた。この寒冷化は、それぞれ、マツヤマ-ブリュンヌ地磁気逆転期と、ハラミヨサブクロン下限の地磁気極小期に一致しており、約40%以下への地磁気の減少が、約1~4℃の気温低下を引き起こしたことを明らかにした。成果の一部をGondwana Research誌に公表したほか、近日中にScience誌に論文を投稿し、国内外の学会で発表を行った。2.110万~70万年前に生育していたブナ属は、絶滅種を含むため、植物化石に基づく同時代の気候復元は困難であるとされてきた。そこで、この絶滅種の分類学的位置と生育条件を明らかにした。この成果は、第四紀研究に論文を公表し、国内の学会で発表した。3.インドネシアのハラミヨサブクロン下限相当層の花粉分析を行った。この層準では古地磁気強度を得ることが困難であり、地磁気強度と気候の関連を検証するには至らなかったが、地磁気逆転境界付近を境に、環境が大きく変化したことを明らかにした。このほか、共同研究として、新第三紀~第四紀の磁気層序と植生・気候変化に関する研究や、インドネシアのマツヤマ-ブリュンヌ境界付近の人類化石産出層に関する古地磁気・古気候学的研究を行い、論文を公表した。
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