我々は急性骨髄性白血病(AML)患者から採取した白血病幹細胞(CD34^+/CD38^-分画)に特異的に発現しているテトラスパニンCD82を同定し、このCD82の白血病幹細胞における機能解析に着手した結果、CD82が白血病幹細胞の骨髄内のニッチへの接着と生存に影響を及ぼしている可能性を見出した。またCD82が伝達する細胞内シグナルを探索するために、レンチウイラレス粒子を用いてcD82highの白血病細胞のcD82発現を低下させ、コントロールshRNAウイルス粒子を感染させた白血病細胞と、各種細胞内シグナル伝達蛋白質の発現レベルをウエスタンブロット法で定量化、比較検討した結果、CD82発現はSTAT5の活性と相関があり、同様のことがAML患者から採取したCD34^+/CD38^-細胞でも確認され、CD82がSTAT5を介して白血病幹細胞の生存も制御している可能性が示唆された。以上より、CD82は白血病幹細胞のニッチへの接着及びその生存を制御している可能性がある。ニッチベ接着した白血病幹細胞は抗がん剤に対して耐性を示すが、AML細胞表面上のCD82をブロックすればAML細胞の骨髄への接着が剥がされ、この剥がれたAML細胞を抗がん剤で駆逐可能かもしれないと期待される。そこでこのCD82の機能を阻害する目的でCD82モノクローナル抗体を使用して抗がん剤AraCとの併用効果を検討した。超免疫不全マウスにAML細胞を移植し、AML細胞の生着確認後これらの薬剤を投与、した結果、各単剤投与でも脾臓における白血病細胞の割合が低下したが、併用するとさらに低下した。これらの結果より、抗がん剤とCD82モノクローナル抗体の併用は白血病治療に有効である可能性が示唆された。
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