研究課題/領域番号 |
10J00374
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北田 敦 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | ソフト化学的手法 / 低次元磁性体 / 酸化物薄膜 / 低温合成法 / 二次元磁性体 |
研究概要 |
申請者はソフト化学的手法という固体物理の分野ではなじみのない合成法を取り入れ、数々の新物質を合成し、その新奇な物性を次々と発見した。ソフト化学的手法の特徴であるトポタクティック反応により、母物質の結晶構造を反映した物質設計が可能である。このソフト化学的手法のひとつである低温固相イオン交換法により合成した正方格子二次元スピン系においては、量子効果の強い銅の系について従来の類似物質よりも二次元性を著しく向上させた物質を新たに合成し、2Kの極低温まで磁気秩序がないことを確認した。またスピン量子数依存性について調べる目的で、磁性イオンをマンガン、コバルト、およびクロムに変えた系の合成にも成功し、マンガン、コバルトの系でストライプ型の磁気秩序を見出した。そしてクロムの系では一連の系で初となるG型磁気秩序を明らかにした。このG型秩序の確認は我々の予想を裏切った、興味深い成果である。 上記の固相イオン交換反応に限らず、低温でも強力な還元力を発揮する金属水素化物を用いた低温固相還元反応による電子伝導体の開発にも取り組んだ。透明伝導体として注目される還元アナターゼTiO2-δ薄膜にこの手法を適用し、その酸素量を幅広く、またその電子物性を系統的に制御することに成功した。そして、従来よりも1桁低い10-3Ωcmの室温抵抗率を、金属状態及び半導体状態の両方で達成した。また、その2Kにおける磁気抵抗の符号が組成に従って正から負、そして再び正に変化するという興味深い物性を観測した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トポタクティック反応というソフト化学的手法の特徴を最大限に活かして、正方格子系量子スピン系の新奇物質の合成に成功した。そして2Kまで磁気秩序をもたない物質(CuCl)Ca2NaNb4O13、類似化合物において従来報告のなかったG型反強磁性を示す(CrCl)LaNb2O7を発見したほか、室温で10^21Ωcmという高キャリア濃度を達成した。これらの物性は全く予期していなかったものである。
|
今後の研究の推進方策 |
種々のトポタクティック反応を組み合わせることにより、さらなる新物質の開発が望まれる。例えばこれまでの研究で用いた低温固相イオン交換反応と、低温固相還元反応を組み合わせることによって、銅の正方格子磁性体へのキャリアドーピングを行い、金属化または超伝導化を試みる。反応の順序によって合成の可否が左右されうることを考慮して、多段階反応におけるシーケンスの検討も行う。
|