デュアルゲート構造を用いてゲートストレス位置がAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)の電流コラプスの振舞いに与える影響を評価した。オフ状態でのゲート電圧ストレスをメインゲートとドレイン電極の間のアディショナルゲートに印加した時、オン抵抗(R_<ON>)の顕著な増大が確認された。一方、メインゲートへのオフ状態ストレスはR_<ON>の増加と同様にドレイン飽和電流の減少を引き起こした。 AlGaN表面の電界計算によって、ドレインとソース側のゲート端に電界集中が存在し、それがAlGaN表面の両側のゲート端領域に電子蓄積を引き起こす可能性があることが示された。これらの結果は、オフ状態ゲートストレスがゲート端からドレインとソースの両方向へ"仮想ゲート"を広げていることを指し示している。また、Al_2O_3を絶縁膜に用いたMOS-HEMTを作製し、表面保護前後のショットキーゲートHEMTとの間の電流コラプスの違いを評価した。表面保護によってショットキーゲートHEMTのオン抵抗の増大は、他の報告と同様に、著しく低減した。一方、MOS-HEMTにおいては、更なる低減が認められた。この原因としては、MOS構造の導入によるゲートリーク電流の低減がMOS-HEMTのAl_2O_3/AlGaN界面への電子注入を抑制している可能性が考えられる。この他に、デバイスシミュレータを用いた電界計算によって、ゲート電極とAlGaN表面がAl_2O_3を挟んで離れていることで、AlGaN表面における電界集中が効果的に抑制されていることが推測され、この電界の抑制によってゲート端からの電子注入が少なくなっている可能性が判明した。以上の結果から、電流コラプスの抑制のために、ドレイン側だけでなくソース側のアクセス領域の考慮が必要であることと、MOS構造は有望なデバイス構造であることがわかった。
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