研究課題/領域番号 |
10J00506
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
生物多様性・分類
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡西 政典 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | クモヒトデ綱 / ツルクモヒトデ目 / 分類学 / 分子系統学 / 生物地理学 / 新種 / 西太平洋海域 / 日本近海 / 系統地理学 |
研究概要 |
本研究では、独特な生態や形態を持つため進化的に非常に興味深いが、深海性であるがゆえ後れていたツルクモヒトデ目の系統分類を明らかにし、その生物地理学的な進化の一端を解明した。 これまで研究代表者が収集した、西太平洋海域・カリブ海・南極近海・アリューシャン列島産の83種のツルクモヒトデ目についてミトコンドリアの16S rRNA領域とCOI領域、および核の18S rRNA領域の部分配列を決定し、分子系統解析を行った。その結果、(1)これまでに知られている4科のうち、キヌガサモヅル科+テヅルモヅル科、およびユウレイモヅル科+タコクモヒトデ科がそれぞれ単系統となる、(2)タコクモヒトデ科は側系統群となり、それ以外の科はそれぞれ単系統となる、(3)ユウレイモヅル科+タコクモヒトデ科はこれまでの分類体系とは異なる3つのサブクレードに分かれる、(4)テヅルモヅル科は3つのサブクレードに分かれる、ということが明らかとなった。SEMなどを用いた詳細な形態観察によってこれらのクレードを支持する形態形質を認め、本目の科階級群の系統はほぼ確かめられたといえる。 また、得られた系統樹と西太平洋海域に分布する種の生息情報を網羅的に精査・比較することで、深海起源の本目のうち、腕を分岐という特徴的な形態を派生的に獲得したものが浅海へ適応した可能性が新たに示唆された。 また、これまでに研究代表者が訪問した6カ国8研究機関に所蔵されていた117種(現生種の約62%)のタイプ標本と、国内外併せて約2400個体の標本の観察情報を比較することで、これまで185種が知られている本目は、7種の未記載種と14種のシノニムを含み、少なくとも178種に整理されることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定であった種・属の分類の混乱は概ね解消し、科科階級群の分類については2科のみでなく全科についての系統をほぼ確かめられた。得られた成果の一部は既に論文として発表した。また、当初予定していた分子分岐年代の推定からは確固たるデータは得られなかったものの、西太平洋海域に生息する種の分布情報の網羅的な整理という新しい視点を取り入れることによって、予想しなかった生物地理学的成果を得ることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究によって、ツルクモヒトデ目の科階級群の系統分類はほぼ確かめられたといえるが、その下の属の分類に関しては不明瞭な部分がみられた。これを解決するためには、骨片だけでなく筋肉などの柔組織の観察が必要となってくるだろう。また、本目が所属するクモヒトデ綱の系統分類は依然不明瞭なままである。日本近海はクモヒトデ綱の多様性が高く、本綱の系統分類学的研究を行う上で格好のフィールドである。そこで今後は、本目の研究で培った分子系統解析の手法や、クモヒトデ類の形態観察手法に基づくことで本綱を用いた網羅的な系統分類学的研究に発展していけると期待される。
|