研究概要 |
本研究では、固体中を伝導できる4価イオンとそのイオン伝導性を明らかにし、高い4価イオン伝導性を有する固体電解質の開発を目指した。 これまでにイオン伝導に適したナシコン型構造を有するMNb(PO_4)_3(M=Hf,Zr,Ti,Sn,Ge)が、それぞれ4価のHf^<4+>イオン、Zr^<4+>イオン、Ti^<4+>イオン、Sn^<4+>イオン、Ge^<4+>イオン伝導体であることを実証してきた。これら伝導4価イオン種の中で、電気陰性度が最も小さいHf(Hf1.3,Zr:1.33,Ti:1.54,Sn:1.96,Ge:2.01)は、周囲の0(3.44)との電気陰性度の差が大きいことから、共有結合性よりも結合力が弱いイオン結合性が支配的であり、Hf^<4+>イオンを伝導種とするHfNb(PO_4)_3において最も高いイオン伝導性が得られている。さらに、平成23年度の研究において、HfNb(PO_4)_3のP^<5+>イオン(イオン半径:0.031nm[4配位])サイトに、より高価数、かつよりイオン半径が大きいW^<6+>イオン(0.056nm[4配位])を部分置換することで、Hf^<4+>イオンとO^<2->イオンとの静電的相互作用を低減させ、かつ格子体積の増大によりHf^<4+>イオンの伝導経路を拡大させたHf_<1-x/4>NbP_<3-x>W_xO_<12>を合成したところ、Hf_<3.95/4>NbP_<2.95>W_<0.05>O_<12>が600℃において母体であるHfNb(PO_4)_3よりも約25倍高い導電率を示すことを報告している。そこで今年度の研究では、Hf^<4+>イオン伝導性のさらなる向上を目指し、Hf_<1-x/4>NbP_<3-x>W_xO_<12>のNb^<5+>イオン(0.078nm[6配位])サイトに、イオン半径は小さいものの、より高価数のW~<6+>イオン(0.074nm[6配位])を部分置換させることで、Hf-O結合を弱め、かつ格子サイズを制御したHf_<1-x/4>(Nb_<1-y>W_y)_<5/(5+y)P_<3-x>W_xO_<12>の合成を行なった。その結果、Hf_<3.95/4>NbP_<2.95>W_<0.05>O_<12>と同じ格子体積(1.482nm^3)であり、かつW^<6+>イオン添加量が多いHf_<3.85/4>(Nb_<0.8>W_<0.2>)_<5/5.2>P_<2.85>W_<0.15>O_<12>において、母体であるHfNb(PO_4)_3と比較して600℃で約2.8倍高い導電率が得られた。 以上の結果より、ナシコン型構造を有するHfNb(PO_4)_3のNb^<5+>イオンおよびP^<5+>イオンサイトの両方にW^<6+>イオンを導入することで、Hf^<4+>イオン伝導経路の拡大による寄与に加え、Hf^<4+>イオンとO^<2->イオンとの静電的相互作用を大きく低減させたことにより、これまでで最大のHf^<4+>イオン導電率を達成した。
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