研究概要 |
本研究では、システイン含有タンパク質を用いることで、金属クラスター構造が強固に保持され、水溶液中で反応性をもつ生体金属触媒の構築をめざしている。当該年度においては、高い還元能を有する生体金属触媒の開発をめざし、水素活性化タンパク質である[FeFe]-ヒドロゲナーゼの活性中心と類似した硫黄架橋鉄カルボニルクラスターをもつタンパク質触媒の開発をおこなった。具体的には、電子伝達タンパク質であるシトクロムcが有する二つのシステイン残基を金属錯体の導入部位として、鉄カルボニルクラスター含有タンパク質を構築し、触媒的な光化学的水素発生反応の反応性について調べた。その結果、この人工還元酵素が、光増感剤共存下、常温常圧水中の温和な条件下において、高い水素発生能を有することが分かった(pH4.2,2時間でTON=ca.80)。さらに、シトクロムcが有する二つのシステイン残基に隣接するヒスチジン残基を新たな金属錯体の導入部位として着目し、触媒活性部位および光増感部位を有する人工還元酵素の構築をめざした。具体的には、シトクロムc_<556>のアミノ酸配列の一部を基盤としたペプチド鎖に鉄カルボニルクラスターおよび(2,2'-ビピリジン)(2,2' : 6',2"-ターピリジン)ルテニウム錯体を導入した人工還元酵素を構築し、触媒的な光化学水素発生反応の反応性について調べた。 その結果、常温常圧水中の温和な条件下において、触媒的な水素発生反応を示した(pH8.5,2時間でTON=ca.9)。
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