研究概要 |
昨年度までにおいて,M-doped TiO_2層(10nm)上に金電極(100nm)と金ナノ粒子(GNP)プラズモンアンテナを形成したデバイスを作製し,波長400-800nmの範囲の光を照射しながら電流を測定した結果,波長620nm付近に光電流増大率ピークをもつ波長依存性を確認し,GNPの局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を電気的に検出できることを示した.しかしながら,具体的なLSPR検出機構は明らかになっていない.そこで本年度では,実験的手法と計算的手法の両方を用い,LSPRの検出機構の解明を目指すとともにデバイス構造の最適化を行った.その結果,デバイスのAu電極膜厚を変えて光電流増大率を評価した実験より,Au電極膜厚が薄くなるにつれて波長620nm付近のピーク強度が増大することがわかった.この結果は,光照射によってAu電極表面に励起された電子が光電流に寄与していることを示している.また,光電流増大率のピーク強度の光照射角度依存性から,Au電極の表面プラズモン共鳴(SPR)が電子を励起していることを見出した.さらに,有限要素法の電磁場解析より,本デバイスの構造においてAu電極表面にSPRが起こり得ることを確認した.以上の結果より,光電流Au電極のSPRが,波長620nm付近の光電流増大率ピークの一因になっていることがわかり,金電極のSPRと金ナノ粒子のLSPRが互いに作用しあっていることを見出した.これは,金ナノ粒子の形状・サイズやAu電極の構造を設計・最適化することで,金ナノ粒子のLSPR波長とAu電極のSPR波長を一致させることができれば,信号強度(光電流増大率)の飛躍的な増大が期待できることを示している.本年度の成果は,バイオセンサーを半導体チップ上に集積した小型バイオセンサーチップの基盤技術の足がかりとなることが期待できる.
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