研究課題
特別研究員奨励費
GTP結合型Ras(Ras-GTP)は不活性型のstate1と活性型のstate2という、2つの相互変換(遷移)可能な高次構造をとる事が知られている。本研究では、シーディング法による結晶化を行い、様々なH-Ras(野生型、G12V、Q61L)のstate1構造を決定する事に成功した。これにより、3種類のRasタンパク質で初めて2つのstate構造が明らかとなり、state遷移のメカニズムのより詳細な解析が可能となった。また、state1の分子表面には薬剤が結合可能なポケットが存在し、H-RasG12V並びにQ61Lは癌化と密接に関係している変異体であることから、このポケットはRas機能阻害剤開発の新たな標的になると考えられる。当研究室ではstate1のポケットに結合し、Rasをstate1に安定化する事でRasの機能を阻害するヒット化合物を複数保有している。ヒット化合物がRasをstatelに安定化する作用メカニズムを明らかにするため、前年度はH-Rasとヒット化合物との複合体のX線結晶構造解析を行ったが、構造決定には至らなかった。本年度は前年度の手法に加え、予め作成した結晶に化合物を添加するソーキング法を併用する事でヒット化合物の作用メカニズムの解明を試みた。H-Rasとヒット化合物との共結晶化を行ったところ、化合物の色を帯びたH-Rasの結晶を得たことから、この結晶には化合物が結合していると判断された。しかし、X線結晶構造解析を行った結果、ヒット化合物の電子密度を得る事ができず、H-Rasと化合物との結合親和性が低いと考えられた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)
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http://www.med.kobe-u.ac.jp/molbiol/index.html