研究課題
特別研究員奨励費
シリコンナノワイヤトランジスタの原子論的フォノン散乱移動度シミュレータを開発した。最初に、sp^3d^5s^*モデルによる強束縛近似法からシリコンナノワイヤの電子バンド構造を計算するプログラムを開発した。そして、第一原理計算法から計算されたバンド構造と比較して妥当な計算結果であることを確認した。次に、Keatingポテンシャルによるフォノンバンド構造の計算手法を開発した。強束縛近似法とKeatingポテンシャルから計算された電子/フォノンバンド構造と原子波動関数/原子振動ベクトルを用いて、原子論的な電子-フォノン摂動ハミルトニアンを計算する方法を開発した。最終的に、フェルミの黄金律からパウリの排他律を取り入れたフォノン散乱確率の計算を行い、線形化されたボルツマン方程式からシリコンナノワイヤトランジスタにおけるフォノン散乱移動度の計算するシミュレータを開発した。また、シミュレーションプログラムの並列化を行い、大型並列計算機で実行可能なプログラムを開発した。一方、これまでの解析的フォノン散乱モデルとして、有効質量近似による電子バンド構造と経験的パラメータによる変形ポテンシャルを仮定したフォノン散乱確率/移動度を計算するシミュレータも開発した。三角形メッシュ分割を行い有限要素法によるシュレーディンガー方程式とポアソン方程式の高精度離散化手法を開発し自己無撞着計算を実施した。原子論的フォノン散乱モデルと解析的フォノン散乱モデルで、移動度の直径・方向依存性を解析した結果、直径サイズが小さくなるにつれて解析的フォノン散乱モデルがその有効性を失い、原子論的モデルが有効であることを示した。さらに、<110>方向が最も移動度が高く直径が3nm以下の極微細ナノワイヤトランジスタにおいて優れた電気伝導性を有することを示した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Journal of Applied Physics
巻: 111 号: 6 ページ: 63720-63720
10.1063/1.3695999