研究概要 |
昨年度までの検討より、難分解性化学物質の分解に係る遺伝子をコードしたプラスミドを導入するプラスミドオーグメンテーションによる、活性汚泥プロセスの難分解性化学物質の分解能の増強が有効であることが、2,4-Dをモデル汚染物質として、またpJP4をモデルプラスミドとしてそれぞれ用いたラボスケールのリアクター試験により示唆された。よって今年度は、プラスミドオーグメンテーションを適用する場として非常に好ましい特徴を有している、膜分離活性汚泥法(MBR)に着目した。特に、活性汚泥内のプロファイルは、活性汚泥内に存在する細菌、およびプラスミドにより影響を受けるため、MBRとCASで形成される微生物群集構造およびプラスミドプロファイルの違いを調査した。 調査対象地として、MBRと標準活性汚泥法(CAS)が並列して設置されており、同一組成の下水がそれら2つのプロセスに流入する実下水処理場を選定した。MBRの運転開始時期より、経時的にMBRとCASから活性汚泥サンプルを採取し、微生物群集構造と活性汚泥内に保持されているプラスミドのプロファイルをT-RFLP法により調査した。 T-RFLP解析で微生物群集構造を調査した結果、MBRにはCAS由来の種汚泥が植種されたために、運転開始時点ではMBRとCASが同様の群集構造を示したが、運転開始後は時間経過と共に異なる微生物群集構造を示すことが明らかとなった。さらに、活性汚泥内に保持されているプラスミドのうち、難分解性化学物質の分解能がコードされているものが多く含まれるIncP1グループのモニタリング方法の開発を試み、制限酵素HhaIを用いたT-RFLP法に供することで、IncP1グループの中でも、IncP1-α、β、εグループに特徴的なピークに分けて検出できることを明らかにした。
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