研究概要 |
本研究の目的は,議論活動(argumentation)を視点として,学校数学における証明活動の指導を構想することであった。この目的を達成するために設定した三つの研究課題のうち,本年度は第二と第三の課題に関する考察を行った。 第二の課題「証明活動の指導の課題を明らかにする」に関しては,学校数学における証明や説明に関する国内の目標論の動向とその背景,及び,大規模調査の結果を「証明(proof)」と「証明活動(proving)」を観点として分析することにより,学習指導の現状を整理し,次の課題を明らかにした。それは,証明活動をいくつかの相に分け,各局面への取り組み方を指導するのではなく,生徒の行う自分なりの説明に焦点を当て,その説明を複数の相に関連付けて学習指導を行う必要があることである。研究発表のうち『数学教育学論究』の掲載論文では,証明の構想とその他の相(問題の理解,証明の構成及び振り返り)との関係に着目して,証明の構想を理論的に規定するとともに,その価値を議論した。 第三の課題「証明活動を促進するために必要な指導を構想する」に関しては,当初は短期間の教授実験の実施と分析による方法論を予定していたが,これを,議論活動の特性に基づく証明活動の方法の理論的分析へと修正した。その理由は,第一と第二の課題に関する考察を進める中で,証明活動における生徒の実際の取り組みを記述することよりも,どのような証明活動を実現すべきかを具体的に明らかにすることの必要性が明らかになったからである。この考察を,第12回数学教育世界会議(ICME12)で発表する予定である(査読結果受領済み)。この論文においては,トゥールミンの「場」概念に着目して議論活動の特性を抽出し,その特性に基づいて,学習指導において実現すべき証明活動の方法を特徴付けた。
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