研究概要 |
当研究では高等動物で小胞体ストレス応答の主要な3経路(ATF6経路,IRE1経路,PERK経路)の生理的意義および組織特異的活性化機構を明らかにすることを目指した。この目的のため申請者はメダカを用いた大量個体による網羅的解析の系を立ち上げた。 前年度より引き続き、ATF6αおよびβを共にノックアウトしたメダカの解析を行い、ATF6α/β二重欠損個体ではIRE1が有意に強く活性化されていること、マイクロアレイ解析によりPERK経路下流の因子も転写が誘導されていることを見出した。同時に、小胞体シャペロンについては存在量が半分程度になっていることが明らかとなり、発生初期の小胞体ストレスをATF6が小胞体シャペロンの転写を介して軽減していることが示された。 次に、IRE1α/βを共に欠損した個体を解析したところ、この個体は発生後に致死となり、肝臓に異常が見られることがわかった。これはIRE1αノックアウトマウスの表現型と類似しているため、メダカにおいてはIRE1の機能をαとβで担っている可能性が示唆された。実際に、IRE1下流のXBP1のスプライシングはIRE1二重欠損個体でのみ起こらなくなった。また、IRE1二重欠損個体において、小胞体ストレス時のシャペロンの誘導が見られたため、メダカにおいてもIRE1経路はシャペロンの誘導には必須でないことがわかった。 そして、5種類の小胞体ストレスのセンサー分子を2つ欠損させた二重変異体を作製したところ、主要なセンサーであるIRE1α、PERK、ATF6αのうち2つを欠損した個体は全て致死となり、しかも異なる組織に表現型を示すことがわかった。 これらの結果は、発生過程において必要とされる小胞体ストレス応答経路が異なっていることを示唆するものである。
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