研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、将来の重力波検出器を用いることで、強い重力場での重力理論の検証がどの程度行えるか明らかにすることである。本年度は、まずDECIGO Path Finder(DPF)を用いて、銀河系内からの中間質量ブラックホール(BH)からの重力波が検出された場合、どのようなサイエンスが期待されるか研究し、単著論文として発表した。研究課題との関連では、DPFを用いて重力子の質量をどの程度制限できるかを計算した。解析の結果、DPFを用いると、現在太陽系実験から得られている制限には及ばないが、連星パルサーからの制限よりも2桁程度強い制限が得られることがわかった。これらの太陽系実験や連星パルサーからの制限は弱重力場での制限であるのに対し、DPFからの制限は強重力場での制限となるため、たとえ弱い制限でも、DPFによって得られた制限には大きな意味がある。次に、曲率2次補正理論において、連星の進化がどのように一般相対論からずれ、どのような重力波形が観測され得るかを、研究実施計画に記載した通り、マサチューセッツ工科大学の学生及び研究員と共同研究を行った。我々はまずpost-Newton(PN)法を用いてブラックホール(BH)周りの重力場を計算し、これを既に知られているQuadratic GravityでのBH解とmatchingすることで、強重力場の情報を含んだ、effectiveなsource項を得ることに成功した。このsource項をもとに、十分遠方でどのような重力波が観測されるかを、再びPN法をもとに計算した。将来の重力波観測でどの程度精度良くこの理論を制限できるか計算したところ、例えば曲率2次補正理論の内のscalar-Gauss-Bonnet(sGB)理論に対しては、太陽系実験から得られている制限よりも、6~7桁以上強い制限が得られることがわかった。将来一般相対論からのずれが測定された場合、そのインパクトは計り知れないものになるだろう。さらに、研究実施計画に記載した通り、本年度は研究成果をウェールズで行われた国際会議(Amaldi 9)を含む様々な学会・研究会で報告した。特に、Amaldi 9では、制限時間いっぱいまで質問があり、発表終了後も何人かの研究者と議論を交わすことができ、本研究の重要性を認識してもらうことができた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (16件)
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