研究概要 |
1. 円偏光に対する無反射,無屈折現象を実現する,3次元等方的旋光性メタマテリアルの作製に取り組んだ.有限要素シミュレーションにより,共振周波数が6GHz程度の旋光性分割リング共振器を設計した後,プリント基板を用いて3次元的な旋光性分割リング共振器アレイを作製した.作製したメタマテリアルの反射,透過スペクトルを測定したものの,円偏光に対する無反射,無屈折現象を実現するような条件の発見には至らなかった.この結果を受けて,現在,円偏光に対する無反射,無屈折現象の物理的意味に立ち戻って,構造の再設計を行っている.すなわち,電場と磁場の位相差が90度(または-90度)の場合に,電場が誘起する起電力により流れる電流と磁場が誘起する起電力により流れる電流の大きさが同じで逆位相になるような構造について検討している. 2. 我々のグループが考案した電場勾配により誘起されるメタマテリアルの透明化現象を利用して群速度の可変制御を行った.このメタマテリアルに平面波が垂直入射する場合は電磁波は吸収されるが,平面波が斜め入射する場合には電磁誘起透明化(EIT)のような透明化現象が生じる.しかも,入射角を変化させることにより透明化周波数における群速度が可変制御できる.理論を実証するために,マイクロ波領域でメタマテリアルを作製して実験を行った.まずメタマテリアルの透過スペクトルの入射角依存性について調べた.垂直入射時には広帯域な吸収スペクトルが得られたのに対し,斜め入射時には吸収線の中に狭い透過帯が現れた.すなわち,EITのような透明化現象を確認できた.搬送波周波数が透明化周波数に等しいパルスをメタマテリアルに入射させパルスの遅延を測定したところ,低群速度と広い可変幅での群速度制御が実現できることがわかった.
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