研究概要 |
本研究では,骨格筋組織特異的TFE3高発現トランスジェニックマウス,マウス筋芽細胞株C2C12細胞を用いて,骨格筋の代謝や筋形成における転写因子TFE3の多面的作用を明らかにしていくことを目的としている. 骨格筋の形成には,筋芽細胞の発生・分化・成熟を制御している筋分化制御因子(MyoD, myogenin, Myf5, MRF4など)が重要な役割を果たしている.これら筋分化制御因子がプロモーター領域にTFE3の結合配列であるE-boxを含んでいることから,本年度は,TFE3が増殖,分化,成熟など筋形成の制御に与える影響を明らかにすることに着手した. 筋芽細胞株C2C12細胞を用いて分化過程におけるTFE3の遺伝子発現の検討を行った結果,分化初期段階において発現が増加し,分化に伴い減少しており,筋分化の制御に関与する可能性が示唆された.そこで,アデノウイルスを用いてTFE3を高発現またはノックダウンさせた後にC2C12細胞の分化誘導を行ったところ,TFE3は筋芽細胞の分化過程において,分化制御因子であるMyoDやmyogeninの遺伝子発現を抑制し,筋分化を負に制御していることを認めた.また,ルシフェラーゼレポーターアッセイやゲルシフトアッセイより,TFE3がmyogeninのプロモーター上に存在するE-boxに直接結合し,プロモーターの活性制御に関与していることが認められた. 以上の結果より,転写因子TFE3が筋分化制御因子としての機能を有している可能性が明らかとなった.
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