研究課題/領域番号 |
10J01033
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
基礎獣医学・基礎畜産学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩永 剛一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | PGD2 / 肥満細胞 / 炎症 / 癌化 / 腸管 / PGD_2 / プロスタグランジン類 |
研究概要 |
術後腸管麻痺のイニシエータとして肥満細胞が重要な役割を果たしている可能性が報告されている。その肥満細胞はプロスタグランジン類の一つPGD2を産生放出する。マウスの鼻炎モデルや好酸球性の気道炎症では炎症を促進する一方で、マウスの腹膜炎や関節炎では炎症を抑制するという報告があり、様々な炎症病態で重要な役割を果たしていることが示唆される。ところで、炎症の持続は組織の癌化を引き起こす。慢性腸炎患者は、大腸癌発症リスクが高い。上記の通り、PGD2は炎症を制御している可能性があることから、慢性腸炎からの癌化における、PGD2の関与を検討した。 PGD2合成酵素欠損マウス(H-PGDS-/-)とWTに、発癌性物質azoxymethaneを投与し、その後腸炎誘発性物質Dextran sodium sulfate (DSS)4日間投与を3週間おきに3回繰り返して、腸炎からの癌化のモデルとした。昨年度の研究成果により、H-PGDS-/-ではWTに比べて、炎症の悪化とそれに炎症に続発するポリープ形成の促進することが明らかとなった。また、H-PGDSは主に、炎症部位に浸潤してくる肥満細胞が発現していることが分かった。これらの結果を踏まえ、以下の研究を行った。 (研究成果)1.先行研究によりPGD2は肥満細胞やマクロファージのTNF-α発現を抑制することが分かっている。TNF-α受容体阻害薬を処置した所、H-PGDS-/-ではWTと同程度まで腸炎が緩和された。このことから、PGD2はTNF-αを抑制することで炎症を緩和していることが示唆された。 2.肥満細胞欠損マウスにH-PGDS-/-より単離した肥満細胞の移入を行うことで、肥満細胞特異的にH-PGDSを欠損したマウスを作成し、その動物を使って病態モデルを作成した。その結果、肥満細胞特異的にH-PGDSが欠損したことにより炎症の悪化とそれに炎症に続発するポリープ形成の促進することが明らかとなった。 以上の結果成果は、論文投稿の準備を行なっている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
発癌性物質アゾキシメタンと腸炎誘発性物質デキストラン硫酸投与による大腸癌化モデルを用いて、PGD2の病態生理的役割を検討してきた。これに関しては、炎症組織中に浸潤してくる肥満細胞から遊離するPGD2が抗炎症作用、抗発癌作用を持つことを明らかにしており、新知見でありきわめて興味深い。一方、筋線維芽細胞に関しては、ATPに関連する論文を完成させ、Eur.J.Phamacol.2013に掲載された。以上、期待以上の成果が上がっていると判断している。
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