研究概要 |
申請者はこれまでに,シロイヌナズナのRABA1メンバーがトランスゴルジ網と細胞膜の間の輸送に関与し,また,塩ストレス耐性に寄与していることを明らかにした. 本年度は,主にこれまで得た研究成果を投稿論文として発表すると乏もに,さらにRABA1メンバーがどのような仕組みで塩ストレス耐性に関与しているのかについて解析を進めた.一つの可能性として,RABA1メンバーがトランスポーターなどの局在制御を介してナトリウム輸送を制御しているという仮説を立てた.これを検証するため,ICP-MSを用いて塩ストレス条件下における野生型および変異体のナトリウム含量を測定したところ,両者に差は見られなかった.また,ナトリウムの蛍光標識試薬であるSodium Greenを用いて,過剰ナトリウムの細胞内蓄積を可視化したところ,野生型と変異体ともに液胞に過剰ナトリウムを蓄積した.これらの結果から,変異体でもナトリウムの取り込み・排出・蓄積は正常であると言え,仮説は否定された.また,申請者との共同研究により,ベルギーのグループが,RABA1bが細胞膜局在タンパク質のリサイクリングに関与していることを報告した.そこで,このことが塩ストレス耐性に関連しているのか調べるため,小胞輸送の阻害剤であるBrefeldin Aを用い,塩ストレス条件下における細胞膜タンパク質PIN1のリサイクリングの様子を観察した.その結果,塩ストレス条件下において,PIN1タンパク質はBrefeldin A誘導性の凝集体に溜まりにくくなった.このことから,塩ストレスがかかると,細胞膜方向への輸送が活性化されるのではないかと考えられた.もし,この現象が塩ストレス耐性の発現に必要だということが証明されれば,RABA1メンバーが何らかの細胞膜局在タンパク質のリサイクリングをストレス状態に応じて制御することが,耐性に重要である可能性が高まる.
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