研究課題
特別研究員奨励費
フォトトロピンは青色光を受容して自身を活性化するプロテインキナーゼであり、植物の様々な生理応答を制御する。その光受容機構としては、発色団を結合するLOV2領域が青色光を吸収して局所的に構造変化し、周辺領域の更なる変化がキナーゼ領域を活性化すると考えられている。本研究では出芽酵母を利用し、全長フォトトロピンのキナーゼ活性化を簡便に検定する実験系を確立した。出芽酵母はフォトトロピンと高い配列相同性を示すキナーゼ、Fpk1pおよびFpk2pを持つ。まず、酵母菌の変異株において、クラミドモナス由来のフォトトロピン(CrPHOT)がFpk1p・Fpk2pの欠損を相補し、青色光依存的に細胞増殖を促進することを明らかにした。次にこの実験系を分子内変異のスクリーニングに応用し、暗所でキナーゼ活性が上昇してしまう変異型CrPHOTを多数取得した。得られた変異は、すべてこれまで知られていない新奇のものであった。中でも、LOV2のN末端側近傍に新奇の変異が集中することを見出した。更にin vitroリン酸化実験により、これらの変異がCrPHOTのキナーゼ活性を暗所で上昇させることを生化学的に確かめた。一方、少なくとも代表として解析したT207I変異では、分光学的性質、多量体化のいずれにも変化はなかった。以上より、LOV2のN末端側近傍領域が、これまで報告されていたC末端側近傍(Jα)領域と同様に、フォトトロピンのキナーゼ活性化に決定的な役割を果たすことが初めて示された。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 287 号: 13 ページ: 9901-9909
10.1074/jbc.m111.324723