研究概要 |
本研究はタナイス目甲殻類の多様化に関係する第1歩脚の機能・形態("脚型")の進化史解明を目指すもので,本年度は以下の成果を挙げた. タナイス目の分子系統解析の論文を公表した.亜目・上科間の系統関係を初めて明らかにし,得られた系統関係と形態的特徴に基づき分類体系を現行の3亜目3上科から2亜目4上科に変更した. 所属上科に議論のあったArctotanais alascensisの系統位置を決定,論文として公表した.詳細な形態観察および分子系統解析により,本種がタナイス上科に属することを明らかにした.また,本種に鋏脚座節という,同上科のTanais属と近縁とされるネオタナイス上科のみで報告されていた構造を確認し,2上科の近縁性についてより強い支持を得た. アプセウデス亜目の側系統性を示唆する結果を得た.Longiflagrum属とカリアプセウデス科は現在アプセウデス亜目に属しているが,進行中の分子系統解析の結果には,2分類群がタナイス亜目と姉妹群を形成するという結果も含まれた.なお,カリアプセウデス科はタナイス亜目のみで知られる「出糸型」生活も行う可能性が示唆されている科であるため,「出糸型」がアプセウデス亜目に起源するという仮説を立て,組織学的手法も導入した研究を計画中である. アプセウデス亜目内で祖先的な脚型と考えられている「俳徊型」を呈する2科のDNAサンプルを作成した.パグラプセウドプシス科は,タイでDr.Angsupanichと共同調査を行い採集した.ギガンタプセウデス科は,琉球海溝から得られた1個体を貸借できた.現在解析を進めているところであるが,前者は貝棲型のグループと姉妹群を形成する派生的なグループであるという結果が得られている. なお本年度は上記研究以外に,採集調査中に得た標本に基づき2報の記載論文を共同で執筆し,成果を学会大会で発表した.
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