研究課題/領域番号 |
10J01224
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
固体地球惑星物理学
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研究機関 | 独立行政法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
澤崎 郁 独立行政法人防災科学技術研究所, 社会防災システム研究領域災害リスク研究ユニット, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 地震波伝播 / 速度変化 / 東北地方太平洋沖地震 / 相似地震 / 余震 / 高周波エンベロープ / コーダ波 / 異方性変化 / 強震動 / デコンボリュージョン解析 / 前方散乱近似 / エンベロープ / 高周波地震記録 / 短波長ランダム不均質媒質 / 非等方震源 / コヒーレンス |
研究概要 |
昨年に引き続き、米国コロラド鉱山大学に2012年8月まで滞在した。その間に、東北地方太平洋沖地震に伴う地盤浅部の速度変化に関する研究を論文にまとめ、Geophysical Journal International誌に投稿した。同論文は2012年11月に受理された。 加えて、プレート境界で発生する相似地震を用い、東北地方太平洋沖地震前後におけるリソスフェア深部の速度変化も推定した。深さ数10kmまでのS波速度は最大で0.3%低下し、低下量は表層100m以浅の6%と比べて1/20に過ぎなかった。差分計算の結果、表層の速度低下だけでも0.3%の低下のかなりの部分を説明できることが示され、地震に伴う速度変化は主に強震動の影響によるものであることが明らかとなった。この結果は、雑微動の相互相関関数の解析から速度変化の深さ依存性を推定したTakagieta1,(2012)やHobiger et al.(2012)の結果と調和的である。 帰国後、申請者は大地震の直後に続発する余震のエンベロープ記録の解析に着手した。続発する余震の記録は本震のコーダ波や別の余震の記録と重なるため、P波やS波などの主要な相を検知することが難しく、震源決定を行うことができない。このため、大地震直後には正確な余震の情報を提供することができなくなる。東北地方太平洋沖地震の直後に緊急地震速報がうまく機能しない例が増えたのも、これが原因である。申請者は、輻射伝達理論に基づくエンベロープを大森一宇津公式およびGutenberg-Richter式にしたがう余震のエネルギー輻射関数にたたみこむことにより、周波数帯ごとのエンベロープを合成した。得られたエンベロープは、指数関数的に減衰する本震コーダ部とべき乗則にしたがい減衰する余震エネルギー部に分けられる。両者のエネルギーが均衡するまでには、本震発生後50秒一100秒程度を要する。この時間は震源距離が小さく高周波であるほど短くなり、高周波、短距離であるほど余震を検出しやすくなることが明らかとなった。この成果は防災上きわめて重要であり、2013年地球惑星科学連合大会で発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北地方太平洋沖地震に伴う速度変化に関する論文を一本仕上げ、さらにもう一本、現在準備中である。また、本研究課題である高周波エンベロープ解析について、余震の震源過程に適用するための基礎的な解析が仕上がりつつある。当初の計画からは遅れたものの、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
3年間で本研究課題の基礎的な枠組みを構築することが出来たが、東北地方太平洋沖地震の発生も重なり、当初の計画であった震源インバージョン解析までは達成できなかった。しかし、米国コロラド鉱山大学に留学する機会を得たことで、高周波地震動に関する知見を深め、国際的な人脈を増やすことができた。これは科研費を最も有効に生かせた例であると考えている。この3年間で取り組んだ内容を今後さらに発展させる予定である。具体的には、現在取り組んでいる余震の発生過程の解析を今年度中に行う目処が立ちつつあるので、これを優先して行う。また、防災科学技術研究所のHi-net連続観測記録を用いて、地震だけではなく深部低周波微動や気象要因、社会要因による高周波波動励起プロセスについても、調査する予定である。
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